会計士が足りない?

こんにちは。今日あたりから台風の影響か、天気が悪いですね。

さて、今朝の日経から。

会計士が足りない

正確には、「(監査法人所属の)会計士が足りない」でしょうかね。

日本公認会計士協会のウェブサイトを見ると、実際は2000年に比べて2016年の会計士(会計士の卵である準会員含む)の数は2倍以上に増えています

記事では、あずさ監査法人が新規受注を停止した、とありますがこれと同じような傾向は他法人でも起きると思いますし、これにとどまらず、監査法人内で採算に合わないとみなされたクライアントは契約を解除する、ということも今後起きるのではないでしょうか。

監査に求められる手続きは不正の発生に伴って複雑化して増える、それに伴って労働時間は長くなる、しかし監査報酬は上がるどころか値引き圧力にさらされて給与も頭打ち、そのあげく不正などの問題が発生すれば責任を追及される、といった現状では監査法人で今後仕事をしようとする会計士が減るのは自然なことでしょう。

そもそも監査という仕事をビジネスベースで行うことに無理があるのではないかと思っています。

上場企業が作成して開示する財務諸表が適正かどうかをチェックするのが監査の仕事ですが、それに対する報酬は現状では監査を受けた企業が払っています。

ところが、その監査人による企業に対するチェックの恩恵は一義的には投資家が受けており、その投資家は監査人に対してはビタ一文監査報酬は支払いません。

企業は資金調達を資本市場で行うわけなので、その投資判断を投資家ができるように監査でお墨付きを得られれば企業も恩恵を受けるため企業が監査に対するコストを負担する、というのが現状の枠組みを是とする考え方だと思いますが、企業側からすれば、「監査報酬=税金」というような感覚に近いと思います。だから税金と同様できるだけ安く済むように企業は値下げ交渉をしてくるということになります。監査手続きを増やしてくれ、なんていう要望を企業がするはずがなく、むしろ減らして報酬を下げろと企業は考えていますからね。

だとすれば、会計士が提供する監査のサービスは国が提供するサービスにしてはどうかと思います。監査サービスというのは資本市場の透明性を確保するための必要な社会コストであり、そのために必要な手続きは国が定め、企業が上場するためにはその手続きを受けるのは必須で、会計士の中でも監査に従事する会計士は公務員的な身分となり、報酬は税金でまかなうということです。報酬の額も、監査手続きに必要なコストはコストとしてしっかり見積もって、人材が確保できるよう国が決定することになります。

別に国としてやらなくても、上場企業から監査に必要なコストを証券取引所が徴収してプールし、監査業務に従事する会計士に配分する、という形でもよいと思います。

これらの形は昔から言われている話であり、特段目新しい主張ではありませんが、やはり今日のような記事が出るようになってきた昨今、再度監査サービスの受益者、そしてそのコストは誰が負担するのか、さらにサービスの提供主体はビジネスマンなのかパブリックセクターなのか、見直す時期に来ているのではないかと思います。

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